闘牛/井上靖

正直、”闘牛大会”が題材ということで、読む前はあまり期待はしていなかった。

実際読んでみると、なんともワクワクする。

ワクワクと言ってもアドレナリンが出まくるとかではなく

続きが気になって読む手が止まらないミステリーなんかとも違う。

舞台であるまだ焼け跡が残る敗戦直後の日本に、

少しずつ、白でも黒でも、得体の知れないパワーを持つ、

今後何かを巻き起こしそうな人が動き出している感じに、スースーするワクワク感を覚えた。

また、津上とさき子のやりとりの心情描写が引き込まれる。

2人の関係はどうなるのか。最後のシーンを読み終えて「…はぅ..くぅうう」となる。

「攪拌」「不思議な円運動」みたいな無機質でぼわっとした表現が、好み。

何を賭けるかはどうでも良くて、その覚悟に魅了され、自分もそういう風に生きてみたいなと。

100ページも無いので、短めで読みやすいですよ。

【あらすじ】

まだ焼け跡の残る戦後直後の日本。

新聞社に勤める津上は、社運を賭けた闘牛大会の実現に奔走する。

津上に闘牛大会の売り込みをしてきた興行師、お調子者の田代。

なんとも言えないパワーを感じさせる実業家、岡部。

肝の座った青年実業家、三浦。

津上の不倫相手のさき子。

果たして闘牛大会はどうなるのか。

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