平成くん、さようなら

古市憲寿さん著、を読み終えて。

少しストレス発散したかった休日に、近くの市民の森ってところで森林浴&読書してきました。

天気良くて、良い感じに木陰のところを発見できたので、そこでおにぎりやお菓子をつまみながら読書。

ベンチとRYO

最高でした。

川の音や虫の声をBGMに数時間読書に没頭してリフレッシュしたので、また頑張れそうです。

さて、この本は先日文豪カフェに来てくれたお客さんがオススメしてくれたので、早速購入して読んでみました。

以下、RYOとNODOKAのそれぞれの感想を綴ります。

RYOと平成くん

話は安楽死が合法化された世界で、自ら安楽死を選択する”平成くん”(ひとなりくん)、を彼女である”愛ちゃん”の視点から見ていく話。

2人とも30歳くらい。

安楽死が合法化されている以外は平成の世が舞台なので、ストーリーには入りやすい。

ただ、社会的・経済的に成功している2人が主人公なので、その生活環境がハイクラス過ぎて(家賃130万とか)田舎貧乏暮らしの私には雲の上の暮らしだなぁという感じでした笑

まぁそこは良いとして、以下、私にとってこの話がどういう話に見えたか。

まず、この”平成くん”がどういう人かというと、

基本はめちゃくちゃ客観的で合理的。何かを判断する時は常識や慣習・感情を挟まずにデータから判断するタイプで、将来いつかAIによる「AI人間」が出てきたらこんな人なのかなー、とか思わされたり。

でもそんな平成くんにも、間違うことは普通にあったり、食べ物の好き嫌いがあったり、猫をめっちゃ愛たり、人間的な部分もある。

かたや彼女の”愛ちゃん”の方は、平成くんのようにめちゃくちゃ合理的でもなく、すごく感情的というわけでもない、中間くらいの人。そしてちょっぴり自由人。

そんな2人が一緒に暮らしている。

そして突然、平成くんが安楽死をしたいと言い出す。

で、この話の中でずっと、平成くんが私には可愛いくてしかたなかったんですわ。

データ重視で、アニメなんかに出てくる科学者キャラみたいな理屈屋でカタイ人か?と思いきや

全くそんなことはなく、相手の意見をすごく素直に聞くんです。

例えばセックス。

平成くんはセックスが嫌いだけど、彼女はセックスがしたい。

その妥協点として、平成くんは彼女からすすめられたスローセックスを習得し、平成くんは着衣のままでアダルト玩具で彼女を気持ちよくする、という2人なりのセックスの形を見つけた。

こんな風に、相手の意見を素直に聞き入れ、自分の意見との妥協点を見つけようとすることができる。

クセが強そうに見えるけど、とにかく変な感情を挟まない素直な人なのだ。あぁ可愛い。

さて、そんな平成くんは、合理的な性格からか、”死”に対しても感情を挟まず、死んだ後に残された人が”悲しい”という感情を持つことも分からなかった。

死んだら物理的に消えるよね、くらいの感覚でいたみたい。

それでも、安楽死の取材や愛猫ミライの事、愛ちゃんの激怒など、情報と体験を通して、そのことを学習していく。

他にも、私たちが自然に共通認識として持っている”思い出”や”何気ない会話ができる相手”の重要性、なんかも少しずつ学習していく。

この過程が、AI人間が”人の感情”というものを”情報”や”データ”を通して推測できるようになっていく過程に思えて、キュンとした。

将来AI人間が出てきて、彼女や彼氏になるという世界がもし来たら、こういう事も起こり得るのかなぁ。

そうだとして、感情を学習したAIはどこまで人間の感覚と近くなるのかねぇ。

なんて、妄想好きの私は妄想を膨らましたりして、、、、。

とりあえず、そんな風に素直に変化していく平成くんが、ただただ可愛い。

“触れ合い”なんかも特に重要視していなかったのに、最後の方では愛ちゃんを”抱きしめる”までに。

そして最後。

“死にたい平成くん”は”死んでほしくない愛ちゃん”に対して、

2人の意見に中間点が無いこの命題に対して、

どこまでも素直な平成くんは

どんな答えを見出すのか。

そこは是非読んでみてください。

最後に読み終えて思い出したのは、漫画ワンピースのあるセリフでした。

「人はいつ死ぬと思う?・・・

人に忘れられた時さ。」

って言うやつ。

平成くんは可愛いし、感情を挟まずに合理的に物事に対処できるのが羨ましいなぁと思ったけど、

読み終えて、このセリフを思い出して、なんか色々感傷に浸ったりした私は、

結局感情に支配されてるなぁ、と思いました。

さよなら、平成くん。

NODOKAと平成くん

「平成くん、さようなら」、良かった。すごく良かった。

あなたは、あなたの大切な人に「死のうと思う」と告げられたらどうしますか?

これは安楽死がテーマ。

全体的な感想としては、静かにゆっくりと、まさに「安楽死」のように穏やかな時間が流れる本だった。そして最後はすごく切なくなった。

あぁこれは読んだ後の余韻が長引くやつ。読み終えてもなかなかその世界から抜けれなくて、「平成くん」がまだずっと居る感じ。

この感覚が好きで、私は本を読むのかも。

そんな余韻がなかなか抜けないこの「平成くん、さようなら」。

結末は分かっているのに、認めたくなくて、何かみんなが幸せになる方法を、と思ってしまうけど、「幸せ」って何だ、、とそんなことを頭の中で繰り返しながら、読んでしまった。

ストーリーとしては、安楽死が合法化された日本が舞台で、経済的に裕福で社会的地位も高いカップル2人の話。

その彼女か主役で、彼氏の「平成くん」に「安楽死をしようと思ってる」と告げられる。そんな衝撃的なシーンから物語が始まる。

安楽死。

全然身近な話ではないけども、なんとなくそれぞれに意見を持ってるであろうテーマ。さすがいいところに目を付けるなぁー古市さん。と思う。

でもこの安楽死。

少し状況は違うけど、森鴎外の『高瀬舟』を思い出す。死に切れず苦しんでいる弟にとどめを刺したところをたまたま目撃され殺人犯にされてしまう兄。これは罪とは一体という方向だけど、結局は苦しい最期を遂げるなら、苦しみながら生き続けるのなら、自ら命を断ちたい、という共通する話のように思う。 

そう思うと、こういった「生」と「死」の問題は、時代を経てもずっと考えられている問題なんだろうな。

ところで、私自身は安楽死について、全然知識はないけども、何となく肯定派。

自分が死ぬ時も、なるべく穏やかに死にたいと思うし、私の大切な人たちがそうなる時も、なるべくなら苦しまないで欲しい。

ただ、そうなるまでにどうするかが安楽死の問題点で、どの時点で、見切りを付けるか、見切りと言うと聞こえが悪いけれど、どの時点から安楽死の処置をするか。

安らかに眠ってほしい、と思いながらも、なるべく長生きしてほしい。と私は思ってしまう。

主人公である平成くんの彼女、愛ちゃんも同じ意見。

対する平成くんは、それは残されるもののエゴなんじゃないか、苦しんでるのはその本人だ、と言う。

それも確かに。とも思う。でも苦しみながらも本当は生きたいかもしれない、という愛ちゃんの気持ちもまた、すごく分かる。

これは愛ちゃんが幼い頃から飼っていた猫、ミライが亡くなった時の2人のやりとりで、昔犬を飼っていた私は、どっちともの意見も共感した。

私が飼っていた犬も、老衰で最後はあまりご飯を食べなくて、ほとんど一日中同じ場所で横になっていて、だんだん生気が無くなっているようだった。でも声を掛けてるとわずかながら反応を示してくれ、仕事から帰ってくるまでどうかこのままで、と思いながら出掛けていた。そしてついに、帰宅前に亡くなってしまった。最初は最期を看取れなかったことがすごく悲しくて悲しくて、なんで一緒に居てやれなかったんかと思った。でも母から最期は穏やかやったよと聞かされ、ほっとしたのも事実で、すごく辛そうにしてたから天国で走り回れてるなら、それはそれで幸せなことなのかなと思った。

自分が帰るまで待ってて欲しいというのは、独りよがりなのかもしれない。

突然、その相手との人生が終わるのが「死」だけど、”記憶の中で生き続ける”という言葉もある。それは時に支えにもなるし、やっぱり実態がないことで淋しくもなる。

でもこのずっと記憶に残るっていうのも、もし私が先に逝く側の立場なら、”どうか早く忘れて前を向いて進んで”って思う気持ちもあるけど、”忘れないで”とも思ってしまう気がする。私の性格上、たぶん後者の気持ちが強い…気がする。

もし、実際そういう状況になったら、これみよがしに色んな事柄を自分と結びつけようとするんじゃないか、と自分でも自分の性格に呆れてしまう、、笑

物語の終盤にも、「この世界の誰からも忘れられたらそれは悲しいこと」というやりとりがある。

平成くんは、愛ちゃんにお母さんの記憶を託し、自分の思い出も託した。そして熱海の神社で平成くんのお母さんの遺骨を撒く。

にしてもみんな骨撒くん好きやなー。私の好きな村山由佳さんの『遙かなる水の音』も骨を撒くし、誰もが知ってるだろう(え、知ってるよな?笑)『セカチュー』でも骨を撒く。

私の父も沖縄の海に撒いてくれって言ってたし、私もどこかに撒いてほしいと思ってる。これは一種の儀式か何かなんかな。でもその方がなんか天国行けそう笑

話は天国から少し戻しまして、「平成くん」自身の話を。

平成くん、平成くんと言っていますが、ひとなりくんと言います。

“平成”と同時に生まれ、そして平成と共に亡くなろうとしています。

この「平成くん」のキャラがなかなか面白い。そして可愛い。彼女の愛ちゃんの気持ちがすごくわかる。平成くんはすごく可愛い。一見冷静で合理主義、何事にも理性的な彼。でもそこから覗く人間らしさがたまらなく可愛い。

この平成くんの会話での返しも好き。何やろ。無重力感。心地よい。

ネガティブという訳ではなくて、何かに影響を受けて乱されたりすることのない感じ。そんな平成くんが言う、「安楽死を考えてる」は、もう宣言にしか聞こえない。

そんなところから始まり、愛ちゃんと平成くんがそれからどのように過ごしていくのか。平成くんの心持ちの変化にも注目です。

さて、冒頭の質問。

あなたは、あなたの大切な人に「死のうと思う」と告げられたらどうしますか?

私はまだ答えが出ません。たぶんそんな状況にならないと、答えはでないんでしょう。

でも全然そんな話ではなかったのに、大切な人を”大切に”しようと思いました。

RYOと平成くん、ネタバレ追記

読み終えて1日経ちましたが、絶賛平成くんロスです。

最後の

「ねぇ、平成くん」

のやりとりを思い出しては

「ウォォー」

って叫んで、相方をびっくりさせています。

頑張ります。

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